名古屋高等裁判所 昭和26年(う)216号・昭26年(う)217号・昭26年(う)218号 判決
被告人徐相奉及び同金盛好の弁護人の控訴趣意第一点の要旨は原判決は、公訴事実中に被告人徐相奉が酒井巡査着用のズボンを破り被告人金盛好が鈴木巡査の制帽の顎紐を引きちぎつた旨の記載があるが、罰条中に右器物損壊に対する適条の記載がないところから見ると右の所為は、本件起訴の範囲に属しないものと認めると判示しているが、右器物損壊の行為は、起訴状の公訴事実中に記載されているにも拘らず、これを本件起訴の範囲に属しないものと判断するのは不法であると謂うにある。
よつて本件起訴状の公訴事実を見るに、被告人徐相奉が酒井巡査の着用せるズボンの左ポケツトに手をかけて二寸位破つたり、被告人金盛好が鈴木巡査の制帽の顎紐を引きちぎつた旨の記載があるのは、被告人等が岐阜県事務吏員真柴巧及び多治見市役所事務吏員生駒勇の公務執行を妨害する手段として、同人等に暴行を加えたりその暴行を制止しようとした右巡査等に暴行を加え、右の公務執行を妨害した点を具体的に説明するために記載したもので、公務執行妨害罪の外に器物毀棄罪を起訴する趣旨で記載していないことが十分に認められる。検察官が親告罪につき、告訴のないのに器物毀棄罪を起訴したものと想像することは困難であるし、本件は、被告人のみの控訴であつて、原審が被告人等については、器物毀棄罪の起訴はないと有利に認定したのに、これを被告人等の不利益になるようなことを主張することは、弁護人として適切妥当な措置と謂うことはできない。論旨は、全く理由がない。